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長期投資のための(てきとう)企業・業績分析を垂れ流すブログ

【企業分析】 7030 スプリックス

企業概要情報

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企業分析

概要

教育の「ど真ん中」のニーズを正面からとらえ、サービスマネジメント・オペレーションコントロールの理論を駆使」しながらさまざまな成果を「計測・収集」し、そのデータに従い「細かな改善を長期間にわたって積み重ねる」ことで世界一の教育関連企業を目指す。
「誠実にかつ科学的に」というアプローチを柱とし、顧客のニーズを真正面からとらえ少しずつ付加価値を高める活動を積み上げ継続することで「結果として圧倒的な付加価値を提供する。」
「オンリーワン」または「ナンバーワン」を目指し、「お客様の学びに貢献するため」に新たな事業にも積極的にチャレンジするベンチャー企業

強み

データを重視した科学的なアプローチ

今でこそデータ分析やデータドリブンのアプローチが有用とされていますが、ここはかなり昔からデータを重視し科学的なアプローチで細かな改善を積み重ねてきました。
データを重視した科学的なアプローチを実施する「風土がある」ことと、実施するための「ノウハウが蓄積」されていることはかなりの強みではないでしょうか。

コストコトロール

科学的なアプローチに関連するところではありますが、データやその分析結果に基づいて管理運営を実施するため、的確な箇所に対策をうつことができ、余分なコストをかけない上手いコストコトロールが実現できていると考えます。

サービスコトロールとオペレーションコントロールによる質の均一化

こちらも科学的なアプローチに関連するところではありますが、「力のある講師の行動を記録・分析して、パーツに分解し、数々の実験を通じて、成果に繋がる行動とそうでない行動に分け、再度コアとなる行動をパッケージしてマニュアル化をする。」のようなサービス・オペレーションコントロールを実施して、提供するサービスの質を高いレベルで均一化する努力をしています。
人によらず、それなりに高いレベルのサービスを均一に提供できるのはかなりの強みではないかと。

カニバリゼーションを許容する両利き経営

スプリックスカニバリゼーションについてはグループ内で発生することは健全」という考え方を持っています。
そもそも自立学習REDの事業形態は、AI学習は森塾の競合となりうると考えていたので他社で始められる前に始めたということからも、本当だと感じています。(ちなみにそら塾も森塾と自立学習REDとカニバル)
塾業界(教育業界)というフィールド内ではあるものの、その中で自身の既存ビジネスを破壊する可能性のあるサービスについても常に開発し展開していけるということは、成長を続ける・生き残るという点においては非常に有用な力だと思います。

「オンリーワン」、「ナンバーワン」思考

ビジネスは基本「一番手」が一番儲かる仕組みになっています。(規模の経済や価格決定件等が発生するため)
スプリックスは「オンリーワン」、「ナンバーワン」を目指しそれ以外は基本的には撤退します。
結果として「儲かる事業は残し、儲からない事業は早々に撤退して新しい「オンリーワン」、「ナンバーワン」となれる事業を考える」ができるため、儲けだけでなく成長にも有利な考え方だと思います。
後はこの「オンリーワン」、「ナンバーワン」となれる事業を作り出せるかですが、「森塾」、「自立学習RED」、教材の「フォレスタ」と今まではコンスタントに生み出せていますし、その種も色々ありますので(成長の可能性を参照)期待したいところです。

チャレンジを推奨するベンチャー気質

「コーポレートミッション(教育を通じて世界中の人々の人生に新たなステージを提供する)を強く意識して「出来るだけ失敗をしない」ではなく「教育を通じて貢献するためにはどんな挑戦が出来るか」が意識としては強い企業」とのことで、チャレンジ精神が非常に旺盛なベンチャー企業であり、チャレンジをしなければ生き残れないこの競争社会で生き抜くための気質が備わっていることは企業にとっては強みと考えます。

しかしながら、チャレンジだけでは成り立たないことも理解しており、「チャレンジを推奨するものの既存サービスの安定化・拡大のほうが意識としては強く。安定した既存ビジネスの基盤のもと、新ビジネスに挑戦していく」という考えとのことで、稼ぐことの重要性もわかっているバランスが非常に良い企業であると感じます。

弱みとリスク

少子化によるマーケットの縮小

少子化が叫ばれる中学習塾業界はオワコン…と言われた時期が過去に(多分)ありましたが、データを見るとそれは杞憂だっということがわかります。
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とはいいつつ、「今までが大丈夫だったから今後も少子化が続いても大丈夫」と言うほど楽観論者というわけでもありません。
ただ、私は今後もマーケットが拡大しなくてはならないと思っているわけではなく、今後もある程度以上のマーケットが存在するという状態であれば良いと思っております。
マーケットが存在しさえすれば良い企業は生き残り&拡大ができますので。
少子化はリスク要因ではありますが、学習塾業界のマーケットがある程度の規模で存在し続けるのであればそれほど気にする必要はないと思います。
逆に急激に縮小するようならさすがに警戒しないとまずいと考えます。

貧困層増加、オンライン促進による低価格化

サラリーマンの給料が下がっている現在は常にコスパの良いより安いサービスが求められています。
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そちらの価格競争に巻き込まれたら収益性が下がってしまう(下手したら成り立たなくなる)可能性はあります。
ただ、強みで記載をしたのですが、新しい分野へのチャレンジは常に怠らない企業であるのでそちら向けのサービスも必要と考えれば躊躇なく開発する気はしております。
実際、立ち上げ中のサービス「そら塾」はオンライン個別指導という森塾のお安い版で森塾のパイを喰ってしまう可能性が…

同様の他サービスの侵食

オンラインの席巻に近いですが、森塾と類似(テストの点数UPを保証)サービスに侵食されて森塾の優位性が失われることもあるかなと。
同様の他サービスかはわかりませんが、森塾の1教室あたりの生徒数は減少傾向にあるため、森塾の収益性が継続できるかは注意して見ておく必要があるかと思っております。

講師の確保について

少子化の影響は受講する子供ばかりではありません。
講師の大学生についても少子化の影響は直撃すると考えられるので、講師確保がどんどん難しくなっていく可能性もあります。
とはいいつつ、この企業はサービスコトロールとオペレーションコントロールによる質の均一化をしっかりしているので、他の塾よりは採用できる大学生のハードルは低く、その影響は相対的には小さいかなとは思います。

ブランド価値の毀損

これはどの企業も持つリスクではありますね…
子供を預かっているので他業種よりダメージは大きかもしれませんが、成績が上がるなら文句が出ない可能性も…
どちらにしても、不祥事ダメ、絶対!

成長の可能性

森塾 と自立学習REDの拡大余地

森塾は関東方面に多く出店しているイメージ(というかそれが正しい)ですが、もともとは新潟という地で創業して成長してきた塾ですので、大都市圏以外の地域(全国)でも拡大は可能です。
ターゲット顧客は勉強が普通もしくは苦手なお子さんなので、進学校でない普通の学校がある地域ならニーズはあるかと。
公立学校や普通以下の私立学校があればその周りに出店可となりますが、講師の大学生が確保できるかがあるので通学できる大学が近くにある、が条件として追加でしょうか。
自立学習REDは塾の教師が不要(AIタブレットで実施)なため、店舗の拡大は比較的簡単です。
FCメインであるためスプリックス側のコストは最小限に素早く拡大できます。
(ただ、FC展開をするにあたりオーナーの人柄はしっかり見ているようですが)
こちらもターゲットは森塾と同じで顧客は勉強が普通もしくは苦手なお子さんですが、1教室あたりの生徒数が少なくても成り立つので、森塾より地方向けだと思います。
ちなみに、森塾と自立学習REDであれば森塾のほうが1店舗あたりの利益額は圧倒的に森塾のほうが大きいと思います。
利益率は…わかりませんが、投資や運営コストは低そうなのでさすがに自立学習REDの方が高いか…

オンラインを活用したサービスの活用

コロナ渦において、森塾、自立学習REDについてはオンライン対応が済んでいますが、これにより生徒数が大幅に増えることはないとは思っております。
とは、いいつつこのご時世ではオンライン対応をしているは塾を選ぶ際に(多分)必須の要素だと思われますので対応については必須だと思います。
(自立学習REDについてはオンライン対応していることに安心してオーナーが増える可能性はありますが)
むしろオンラインを活用したサービスとしては「そら塾」というオンライン個別指導塾が非常に面白いサービスと感じております。
従来の森塾スタイルでは塾の近くに大学がないと塾講師の確保ができませんでした。
この「そら塾」は日本中のほぼどこからでも(スマホがつながれば良いので)個別指導が受けられるという、わりと画期的なサービスだと思っております。
親御さんも安心な自宅にいながら個別指導が…ってこれ家庭教師ですね(笑)
「オンラインで」というハードル(心理面、教える側の難しさの面)がどれほどかはわかりませんが、効果が森塾とそれほど遜色がなければ結構拡大するのでは?と思っています。
森塾(リアルの個別指導塾)、自立学習RED(リアルのAI学習)、そら塾(オンラインの個別指導塾)と割とスキがないラインナップなのでどこに転んでもある程度いける気はします。(「オンラインのAI学習」もアイテムは揃っているのでやろうと思えばすぐにできそうです)

AI学習システムの提供

自立学習REDにて提供しているe-フォレスタはAI学習教材となります。
「未来の教室」の実証実験にも参加しており、このAI学習システムを色々なところに提供するという拡大も考えられます。
”e”ではないフォレスタは実際に販売してかなりの人気となっています。
e-フォレスタもこの流れで儲けることができるかもしれません。(ただこの分野はライバルも多そうですが)

基礎学力というマーケット

突然降って湧いてきた「基礎学力」。
どの程度信頼がおけるデータかはわかりませんが、基礎学力に対する調査もしており、それに基づいて国際基礎学力検定「TOFAS」を開始しました。
そして、検定をして実力が不十分だとわかったら「タブレット教材」を使ってもらい実力アップ…完璧な儲けの流れです(適当)
スプリックスが”国際”と銘打っているので今まで基礎学力を検定する物差しはなかったのでしょう。
基礎学力というある意味新しいマーケットが開けるようであれば、世界をも巻き込んだ拡大になるかもしれません。(簡単ではないでしょうが)

プログラミング教室キュリオ

塾数はある程度広がっているのにこの時点で儲けの柱となっていないということは、このプログラミング教室自体の恩恵はスプリックス側には小さいのかなと推測します。
こちらも基礎学力と同じで検定を提供しているため、この検定でどの程度儲かるかだと思います。
プログラミングは教科として取り込まれているため、案外地味に稼ぎ続ける事業になるかもしれません。

湘南ゼミナールの立て直し

数年前は神奈川No.1の塾であった湘南ゼミナール
ガタガタになってステップに抜かれてしまいましたが、ブランド力とノウハウはある…はず。
進学塾と点数アップに特化した個別指導塾という違いはあるものの、同じ塾業界であるため、スプリックスのお得意のデータを重視した科学的なアプローチが活用できる箇所が多くあると考えております。
サービスコトロールとオペレーションコントロールをというとしてノウハウを有しているというのは立て直す上では非常にアドバンテージがあると思います。
ただ、M&Aの難しいところはお互い企業文化や風土が違う箇所で受け入れ難いところがあり、それが改善の足を引っ張る点です。
湘南ゼミナールが立て直せるかは数字や状況を聞きながら慎重に判断したいと思います。(まあ立て直せなければ売却してもらうという手が…)

ギガスクール構想

AI学習システムの提供でもお話していますが、「e-フォレスタ」は「未来の教室」の実証実験にも参加しております。
この流れでe-フォレスタが採用されるとおもしろいですが…ただ、この手の学校等への提供はあまり儲からないかもしれません。
とはいいつつ、森塾や自立学習REDは学校のテストの点数を上げることを目的としているため、学校と繋がりができることは情報がいち早く入ってくるということなので望ましいことだとは思います。

定量的な観点から

業績の観点から

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ここ2年間は売上、利益ともに伸びが鈍化しています。
昨年はコロナの影響があったと思われますが、一昨年については既存教室について1教室あたりの生徒数が減少し始めたため新しい教室の開校をして増加を目指しているが、全体としては鈍化する傾向という流れになっていると思われます。
利益に関しては、人を含めた先行投資をしっかりやっているため利益が圧迫されておりますが、これについては将来の利益になるのであまり気にすることではないと思っています。
営業利益率に関しては1教室あたりの集客力鈍化により上場直後にピークだった25%前後からは落ちると思われますが、今でも20%(先行投資が普通に戻った状態)程度はあるのではないかと。
今期は湘南ゼミナールの売上が乗るため売上が大きく伸びますが利益はむしろマイナスです(笑)
湘南ゼミナールの営業利益率がどのくらいになるかはわかりませんが、森塾よりは劣るとは思いますので、結果として10%半ばぐらいに落ち着くのかな~と思ってはいますが、根拠が殆どない適当想像なので今後業績を見つつ確認していこうとは思います。
ただ、類似業態の学習塾ステップの営業利益率は20%を超えるので、スプリックスのノウハウを導入して立て直せばその利益率も…とか思ったり思わなかったり。
現時点ではほどほどの利益が出るくらいに立て直れば良いと考えております。

財務の観点から

自己資本比率は43.7%と可もなく不可もなく。
ただし、湘南ゼミナール買収前は70%を超えており(しかも半分以上がキャッシュ)基本的に財務は良い。
現金もしっかり保有しており安心感はある。

キャッシュフローの観点から

毎年フリーCFはプラスとなっており、特に問題なし。

資本効率の観点から

コロナ渦、かつ先行投資を継続中で利益を多少圧迫しつつも昨年もROEは14.6%。
上場直後は30%に迫るROEであったが徐々にROEは落ち着く傾向に。

チャート

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チャートは死んでいるので投資としては良いタイミングな気が。投機としては動き出してからでしょうが。